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2015-01-03

チームラボ展が素晴らしかった(感想/レビュー)

チームラボ展が素晴らしかった。感想と共にチームラボという会社、クリエーター達が生み出す世界観というものについて考えてみたいと思います。

team lab チームラボ展が素晴らしかった(感想/レビュー)

IT業界にいるとビジネスとしてどのような課題を解決してイノベーションを起こしているのかを考えたり、どういったテクノロジーが使われているか、テクノロジーの活用についての価値を考えることが多くあります。

そんな中でビジネスとテクノロジーに切り離せないものというのがあります。それはプロダクトデザインです。旧来のプロダクトデザインというと製品機能の開発とそれを操作するデザインとである程度の線引きがあり、製品機能を主として作る人とデザインを主として作る人は別々に物を作り上げてきたと思います。しかし、ITにおけるプロダクトデザインの構築プロセスというのは製品機能とデザインというものが一体となって創出されるUI/UXに価値が置かれるようになってきました。つまり、製品開発とデザインは一連托生だということなのです。

こういった考え方は芸術の世界では一足早く広まっていたと記憶しています。特に音楽業界では音楽とヴィジュアルはとても密接な関係にあり、相互の関係性は作品の良し悪しと深みにコミットメントしています。20年近く前にテクノバンドであるアンダーワールドがTOMATOというクリエーター集団を結成して活動していたことなどが例として挙げられると思います。

ただ、製品開発とデザインが一連托生だということが事実だとしても、デザインを正しく理解しビジネスに結び付けられる人材がどれほどいるのかという問題が生じています。プロダクトを生み出す為のマネジメント層がデザインを理解していないケースがあり、もう一方でデザインを構築するデザイナ層がビジネスというものを理解していないケースがあります。つまり、どっちをとっても上手く行かないということが現実問題としてあります。それを解決する方法としては互いが互いのことを知るということ、そしてそういった人材を育てるということ。近年ではどちらかというとマネジメント層からデザインに関わることができるグロース・ハッカーなる職種が生まれてきていて、彼らはデザインへのコミットメントも求められています。

そのようなトレンド傾向にある現在ですが、IT技術とアートワークを中心に新しい価値創造を生み出している会社の一つがチームラボという会社であり、クリエーター集団なのです。

チームラボとは自身で以下のような説明をしています。

チームラボは、プログラマ・エンジニア(UIエンジニア、DBエンジニア、ネットワークエンジニア、ハードウェアエンジニア、コンピュータビジョンエンジニア、ソフトウェアアーキテクト)、数学者、建築家、CGアニメーター、Webデザイナー、グラフィックデザイナー、絵師、編集者など、スペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団。アート・サイエンス・テクノロジーの境界線を曖昧にしながら活動中。

エンジニアリングとアートの融合が彼らの主となるコンセプトなのです。

僕は以前にチームラボのサービスを検討することになり、水道橋にあるチームラボのオフィスに伺ったことがあります。その時のチームラボでの出来事と印象をご紹介しつつチームラボ展のことに触れてみたいと思います。

チームラボに「FaceTouch」とう商品があり、それを導入するか否かということでチームラボに向かい商談をすることになりました。「FaceTouch」という商品は受付に大きなタッチパネル液晶を配置してそこに社員の顔写真と名前が映し出されていて、タッチ操作で目的の人を探し当てて呼び出すというシステムです。言葉にするとそれだけのことかという感じですが実際にチームラボに行った際、受付がこのシステムで動いていましたが触って探してみたくなるインターフェースでした。

また、受付に顔写真と名前が映し出されるということから、セキュリティ的な意味合いでどうかなとも思いましたが、実際このシステムを使ってみるとそういった感覚はふっとび、新鮮な感覚を受けると共に操作することが楽しいと感じるエッセンスがあります。つまりは、その楽しいということが重要であり、それをエンジニアリングとアートという観点で追求することがチームラボの仕事なのです。

チームラボに到着して受付から共同ミーティングルームみたいな広い場所に案内されました。そして30分あまり待っていても担当者はいっこうに現れません。放置されている人が他にも何組が見受けられます。さらに15分ほど経過したころでしょうか。悪びれる様子もなく担当者が現れました。この時点で僕は若干いらだたしく感じていましたが、現れた担当者がとても軽いノリでまるでラッパーの人と会話しているような感覚を受けるような軽さです。こちらは来客者ですしかなりの時間を待たされているにも関わらず、無礼とも思える感覚を受けたのは言うまでもありません。商談中に机を蹴り飛ばして途中退席したくなったのは社会人人生で初めての経験だったと思います。

この商談でのチームラボの担当者の言い分はこうです。

・この商品に興味があるなんてあなた達は変わってますね
・実はこの商品の開発は継続的にしていない
・新しい価値というものに興味を持った人に買って欲しいので無理に売る気はない
・これまで製品に費やした開発費の回収はしたいから価格交渉はあまりできない

こんな商談は初めてかもしれません。つまりはこういうことです。あなた達が私達の商品に目を留めてくれたのはありがたいけど、その価値を理解してくれるなら、これだけの金額を払いますよね。それが嫌なら別に買ってくれなくてもいいのでお引取りください。だけど、この商品は他のどこの会社も作っていない価値創造が生まれ、それを操作する人間もこういった商品は初めて触ることになりますからイノベーションということに関しては優位ですよね。受付に電話があって担当者を呼び出す旧来のシステムをまだ踏襲するつもりですか。ということなのです。

超絶面白いじゃないですか。自分達がクリエイトした商品の価値について信念を持っていて、別に安売りしてまで買って欲しいとは思わないし、媚も売らないよということです。僕はもう頭にきていたので、商品の説明は右から左へと流れていって頭に入らず金額交渉できないなら導入する必要なしということにするつもりでした。ところが、同行していた上司がこの状態を打開します。チームラボの強気姿勢を無視し続け、上司がそこをなんとかタダでお願いしますという本気モードのお願いを押し通しました。すると、チームラボの担当者がそんなこというお客さんは初めてだということで、逆に話がトントン拍子に進んで行きました。チームラボという感性と上司の感性がある意味で一致していく瞬間でした。つまりは既成概念にはとらわれず、面白いと思ったものを追い求めている両者の利害が一致したということなのです。

上司もチームラボの担当者にはかなりキレそうな様子であったことは間違いないのですが、常識を超える交渉力を土壇場で発揮して、その要求を面白がって乗ってくるチームラボの担当者がまた凄いという事実が目の前で繰り広げられています。僕はこの両者のやり取りを隣で見ていて自分が恥ずかしくなりました。何か常識的なものに大きくとらわれ過ぎていたし、柔軟性と根気強さを欠いていたと思いました。

その後、「FaceTouch」を導入した後は来客者が興味を持って頂いた声というものを多く聞くことができました。

この話とは少し重なり別のことになりますが、同じ時期に商業施設であるパルコに大型タッチパネルディスプレイ型の施設案内版が導入されていました。池袋のパルコを歩いていると若者がこれ楽しいといって大型タッチパネルディスプレイに投影される施設案内を操作していました。直感的にこれはチームラボの仕事だと思ったところやはりそうでした。少しづつですが、チームラボが扱う商品が新しい価値として世の中の人に認知されるのだと感じた瞬間でもありました。

僕にはそのような複線があったうえで、今回、日本科学未来館で大々的にチームラボが開催している『チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地』に行きました。クチコミやメディアなどでも取り上げられいたので、会場にはとても沢山の方々が来館していました。デジタルが作るアートの美しさを五感を通じて体験できる展示となっていて、チームラボの掲げる未来像が大人も子供も楽しめる内容となっています。

なかでも凄いと思ったのは、会場に予め用意された建物や飛行機などのぬり絵の台紙にクレヨンで色を塗り、その場でスキャナしてもらうと会場内の大きなディスプレー上に自分のぬり絵が出現して動くというものです。今まで手元で触れていたぬり絵が画面の中で抽象化された形で出現することがとてもワクワクして楽しいという体験をしました。テクノロジーとアートが新しい体験を提案した一つの形だと思います。

このように、チームラボが生み出す新しい価値というのは人々が予め欲しているものではなく、体験によって面白いと感じて新たに欲しいと思える価値を提供することなのかもしれません。イノベーションを起こすことは容易ではありませんが、チームラボは遊び心と好奇心一杯で世の中に何か面白いものを提案してくれるでしょう。

エンジニアリングとアートの価値が高まって、モノを作る人が主体的に慣れる創造空間を実現しているチームラボの力に今後も注目したいと思います。

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